相続などで土地をもらった場合、受け取る側が1人なら問題はありません。しかし、土地を複数人で分けるケースもあると思います。
1つの土地を複数人で分ける場合は、どうしたら良いのでしょうか。
ここではそうした場合に必要となる「分筆」について必要な書類や手続きを紹介します。
土地を相続する際に、分筆が必要となる理由やメリットを紹介します。
分筆とは…
分筆(ぶんぴつ)とは、1つの土地を法的に分割して分けることをいいます。
登記上は1つとなっている土地を相続などによって複数人で分割する際は、登記し直さなくてはいけません。
基本的にどのような土地においても分筆登記は可能ですが、土地の境界が確定していない土地は分筆登記ができません。
分筆することでできることとは?
分筆をする目的としては・・・
・異なる権利関係や地目をとうきできる
土地の一部を売却したい、土地を分割して別々に登記したいなどの場合は、分筆登記を行いましょう。
分筆をすると、異なる権利関係や地目を登記できるようになります。
土地の登記には“地目”という項目があり、土地の用途により
宅地・山林・原野・田・畑などに区分されます。
一筆の土地の中で地目を分けたい場合は、分筆してから地目を変更します。
例えば、今まで農地として使用していた土地の一部に家を建てるときは、その土地を分筆してから地目を「宅地」に変更しなくてはいけません。
・住宅ローンが組めるようになる
複数人で相続した土地は、分筆することでそれぞれが自由に使えるようになります。
住宅ローンを組む際は、土地に抵当権が設定されます。抵当権とは、住宅ローンなどでお金を借りた際に、土地や建物を担保とする権利のことです。
ローンを組む前に土地を分筆していないと、登記されている土地すべてに対して抵当権がかかってきます。抵当権がついたままの土地では、金融会社から“二重ローン”と診断されてしまい、ローン審査が通りにくくなってしまいます。
・固定資産税や相続税、贈与税などの税金が安くなる
分筆しておくと、節税できるメリットもあります。固定資産税などの税金額は、土地の評価から金額を算出されるので、土地面積が広い、大通りに面しているなど、利便性の高い土地は税金もぐっと高くなります。
分筆をして面積を小さくしておけば、評価も下がり、税金が安くなる可能性があるわけです。固定資産税の他、相続税や贈与税などの税金額も、土地評価が大きく影響します。
注意したい「不合理分割とは」
分筆するときは、不合理分割にならないように注意しましょう。
ただ税金の節税だけを目的にした分筆は、「実態のない、または合理的でない分筆」として処理され、認められない場合があります。
他にも以下のような場合は法的に分筆が認められないケースが多いようです。
・道路のない土地をあるように示した場合
・不整形な土地
・1つの土地の接道が2m未満になり、建築基準法の接道義務が満たされない土地
次に、相続で分筆をする方法を紹介します。
分筆の流れ
分筆をする際は、土地の境界が定まってないと申請が通りません。まずは境界部分への杭打ちが必要です。次に、土地家屋調査士に相談、または依頼をして、法務局や役所で現地調査をしてもらいます。
地籍細部、一筆地測量の調査後は地積測定、地籍図などを作成し、分筆案の作成に移ります。境界標の設置と登記書類の作成が終わった段階で登記所へ送付し、登記申請を行います。
申請に必要な書類
分筆の登記申請には、以下の書類が必要です。
・申請書
・筆界確認書
(境界確認書・境界の同意書・境界の協定書の3点があること)
・地積測量図
・現地案内図
代理申請の場合は、代理権限証書(委任状)が必要となります。
分筆したらどうなる?
分筆は登記申請を伴うため、登記識別情報が変わります。
具体的には、土地の住所・地番などの住居表示や名義が変更されます。
地番とは、登記所が土地ごとに付ける番号のことで、市区町村が付ける住居表示とは異なるものです。
例えば、1丁目2番の土地を3つに分筆する場合は、1丁目2番1、1丁目2番2、1丁目2番3と、地番を土地に合わせて変更する必要があります。
地番が変わっても、必ずしも住居表示を変更する必要はありませんが、分筆後の土地について登記をする際は必要となります。また、分筆による抵当権の変動はありませんので、抵当権の申請は別途行う必要があります。
ここでは分筆は個人でもできるのか、また分筆の費用について解説します。
分筆は個人でも可能?
分筆の測量や境界標の設置には、高い精度が求められるので、一般人には難しい作業となります。そのため、土地家屋調査士や司法書士に依頼することをおすすめします。
また、測量から図面作成まで依頼したのち、分筆登記の手続きを個人で行うことは可能です。
測量の料金
測量費は、ほとんどの場合が10万円~となります。これに加えて筆界確認書作成費、官民境界確定図作成費、境界標設置費が必要となり、それぞれ最低でも10万円~となるケースが多いようです。
土地の境界線が確保されている場合は、筆界確認書作成費や官民境界確定図作成費は必要ありません。しかし、正確性が確認できないものや、1980年以前に作成された地積測量図である場合は、境界確定が必要となります。
登記の費用
登記申請費は5万円~が相場となっており、これに加え登録免許税も必要となります。登記申請を自分で行えるのであれば、依頼費用を節約できます。
登録免許税とは
登録免許税とは、登記や登録に対して課税される税金のことです。
固定資産税評価額、または登記官認定価額に対して規定税率をかけたもので、土地の所有権の移転登記と、新築または購入による登記でかかる税率が異なり、価格や重量に対して一定の税率をかけるものから定額制のものもあります。
土地を相続して身内で分ける場合には、必ず分筆をしておくようにしましょう。しかし、行き当たりばったりで分筆の申請を行っても、申請が認められず手間と費用をムダにしてしまう可能性があります。
せっかく譲り受けた土地ですから、正しく分筆して自分のために、そして家族のために有効活用しましょう。